想々啖々

絶世烟る刖天歌。文学者が思想を日常に翻訳していればいい時代は既に去った。

種族tribus / 圏論×存在論 記法のプロトタイプ

<定義:種族> class Tribus(self):
あるスケイルで《単一と見做せる=閉じている》対象は、自己および他の対象と作用する。当該の対象を圏と見たとき、作用によっていずれかの要素が状態を遷移すれば、この対象は「情報を得た」と見做す。ここで、《当該圏の外部からの=他の対象による》作用に対して状態を遷移する要素の集まりを"知覚"と呼び、自身の遷移につづいて知覚が当該圏の他要素に作用するとき、作用先を"演算器"と呼ぶ。広義に、知覚と演算器をもつ圏は"種族"である。

外部からの作用による、知覚器や演算器の《一時的な状態の遷移=情報の取得》を"感覚"と呼べば、感覚された情報や状態の遷移が持続すること、および何らかの形でそれらが保存されることが"経験"である。あるスケイルにおいて種族どうしの経験が統合される場合、すなわち個々の種族の経験を要素としてもつ圏がある場合、ここに包含構造が生じる。経験のみならず知覚器および演算器を包含する圏は、定義より種族である。区別したいときは、包含する圏を「上位の種族」、包含される個々の圏を「下位の種族」と呼べる。狭義には、上位の種族のみを「種族」と呼ぶ。


<インスタンス化:種族> human = Tribus()
人間は、五感および種々工学的センサを知覚器と、頭脳および計算機を演算器としてもつ種族である。学問など諸知識を経験としてもつとき、故人を含めて全ての人間を要素に含む上位の種族が圏となる。あるいは、人間個体どうしが意思伝達を通じて一箇の世界を見出すとき、この世界自体を経験として、意思伝達および世界形成に携わる全ての人間を要素に含む上位の種族が圏となる。

世界とは、存在論的な外界である。人間(個体)は、自身に感覚される情報から、自身が閉じた対象であることを前提とし、自身に認識可能な一切を要素とする《世界=外界》の圏を構成する。一連の構成プロセスを"存在論"と呼び、このようにして構成されたものを存在論的な外界と呼ぶ。ここで、"外界"とは存在論の構成者自身を要素として含む圏であるが、「存在論の構成者自身」は「世界の要素としての個体自身」と一致しないが、それは「存在論の構成者自身」が存在論の外部にあるためである。対して"世界"はこの両者が一致する圏である。

 

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<圏論×存在論 記法のプロトタイプ> class category():


対象:文上で扱う圏または要素を明示したもの。メタ的に言うと、話者/記述者が文によって何らかの圏や要素へ作用するとき、話者/記述者をドメインと見て、コドメインが対象である。(文:話者/記述者→対象)また、対象が「外部にある」とは、当該圏の要素ではないが、別の圏に要素としてあることを指す。


スケイル:対象が圏であるか要素であるかを決定する尺度。存在論上、すべての対象は何らかのスケイルで圏であり、また何らかのスケイルで要素である。何らかの対象が圏であり、かつ要素でもあるスケイルを特に"マルチスケイル"と言う。


圏:1つ以上の要素を包含し、自身で閉じている対象である。要素は閉じていても開いていてもよい。すべての圏において、個々の要素は必ず、恒等射(id:a→a; 要素aはaである)を含む1つ以上の射に作用される。


要素:あるスケイルにおいて最小の包含関係にあるものを指す。対象について「要素」と呼ぶのは、必ず文中に圏があるときである。恒等射をもつかぎり、要素は単一でも圏となりうる。圏論の文脈上の「対象(object)」にあたる。


作用:あるスケイルで対象どうしを結びつける。これはスケイルによって要素にも圏にもなりうる。作用元を「ドメイン」、作用先を「コドメイン」と特に呼ぶ。包含単位がドメインとコドメインで同等であるとき、圏どうしでは「函手」と、要素どうしでは「射」と、それぞれ作用について呼び分けることもできる。


操作:スケイルによらない作用であり、コドメインに対してドメインがメタである。記述者および記述(内容)が互いに閉じているかぎりは、記述者自身をドメインにとるメタの作用を「操作」と特に呼ぶ。例えば、こうした記法の規定がこれにあたる。

 

例)
ヒトやイルカなど生物一般を要素として、生物が圏となる。全個人および文化的な堆積を要素として、人類が圏となる。そもそも生物進化の過程上でヒトが知能を発達させなければ人類のもつ文化は生じなかったことから、進化論的なスケイルにおいて人類の文化は生物の圏における要素である。また、生物一般という枠組みが生じるのは人類の文化によるものであるため、人文学的なスケイルにおいて、生物は人類の圏における要素である。そしてまた、人文学的なスケイルにおいて、生物一般という枠組みは生物学的な一連の探求活動によって生成されたことから、人類の圏において生成を射として両者は作用関係にある。(生成:探求活動→生物一般)

 

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<表記法(実験)> class orthography:
・A, Bは語。
・Sは半文(名詞および動詞を少なくとも1つずつ含む)。開いた文。
・S. は文(名詞および動詞を少なくとも1つずつ含み、句点で閉じる)。閉じた文。
・P は節(パラグラフ)。1つ以上の文から成る。

A / B論理和(?)。AまたはBのどちらでも。AおよびBは。Aは~であるし、Bも~である。Aには~を適用できるし、Bにも~を適用できる。
《 A = B 》パラフレーズ/同値。AおよびBのどちらを文中に挿入して読んでも当該文の意義は同一である。
"A" … 固有詞。当該文脈上で独自の語用をおこなうことを明示する。明示した以降は表記を省く場合がほとんどであるが、とくに断りがなければ一貫する。
「S」… 断り書き。諒解によって成立する操作を明示する。あるいは、当該半文Sが引用であることを示す。

<> {} は圏や群の定義に用いるため、使用を控える。