想々啖々

絶世烟る刖天歌。文学者が思想を日常に翻訳していればいい時代は既に去った。

加速の実践:サイバーリバタリアニズム & エスケイプリバタリアニズム

[要項]
本プロトタイプでは、「純粋なリバタリアニズム」として目標とする個体の状態を定め、加速により構成される2種類の理論、サイバーおよびエスケイプによってこれに到達しうることを示す。


意志をもつ複数の個体が存在している系を考える。以下に示す到達目標は、リバタリアニズムの完全形である。
純粋なリバタリアニズム
簡潔に言って、これは以下を満たすものである。
・自己が選択しないかぎり、いかなる義務も強制は発生しない。
義務とは、自己が自発的に何らかの行為をおこなわなければならない状態を指す。強制とは、自己ではない個体(群)の行為を妨げないように自己の行為が制限されること、および他己の指示に従って自己が行為をおこなわなければならない状態を指す。義務また強制の発生する状況に至る前に、いずれの機会においても自己は必ず選択の機会をもつ。この選択は、自己が義務また強制を蒙るか蒙らぬかを自己の意志によって決定することを指す。

 

人間種族においては意志そのものが自己にあたり、経済/政治/司法など同種族個体間における要件、ならびに生理学/力学など自然環境による用件が義務および強制の生起要因である。以下の2策は、これら総てに関して乗り越えを可能にする。
*自らの意志によって自己の存続/死滅を決定できることは当然に含まれる。

 

①サイバーリバタリアニズム cyber-libertarianism
本策は、身体を制馭することで純粋形を実現する。
生体工学的な処置によって個体を摂食や疾病など生理学的な強制およびコストの一切を排除する。メンテナンスに関わる技術要件はオープンソースで配布し、拡張脳(生体脳への外付けメモリ並びに外部記憶装置を指す)によって学習牆壁を取払う。このとき、メンテナンスに際して必要となる、工具類や資材を含む一切のリソースに関しては自身でまかなうことが可能であるとする。これにより身体に関して個体自身は義務および強制への選択権を獲得し、副次的に、同種族個体間における要件をクリアする。国家システムの庇護を受けなくとも自己の身体を維持でき、いかなる経済的な流動にも生命を左右されないためである。


エスケイプリバタリアニズム escape-libertarianism
本策は、身体を抛棄することで純粋形を実現する。
すべての神経発火パターンを網羅する応答を記録し、当該時点での個体の精神(意志の生成機関)を情報工学的に複製する。この操作が不可逆である場合、個体の原子性(atomicity)は維持され、通来の社会システムが健全に保たれる。情報化された個体が、自身の意志によって自己の存続の可否を決定でき、他己の一切の干渉によってこれを阻碍されぬよう対抗手段をもち、他一切の義務および強制を自身のみで退けることが可能であるとき、個体は純粋形の要件を満たす。


本プロトタイプ2型は、いずれも、バイオロジーおよびポリティクス両権威を退け、意志自身によってこれらと拮抗することで純粋形を実現する。リバタリアン的な解放には、自己の生物学的/政治的システムの強度を高めることが必須である、という立場をとるのである。この2つの退けが核である。