想々啖々

絶世烟る刖天歌。文学者が思想を日常に翻訳していればいい時代は既に去った。

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単一のビッグバンによって発生する{個}宇宙を『universe』として,その外側を考える.そこは人類に既知の物理法則の埒内かもしれないし,埒外かもしれない.明示的な区別をするため,universe内の時空間を単に『時空間』,その外側の時空間を『メタ時空間』とここでは呼ぶ.メタ時空間が十分な広さをもっているものとして,ビッグバンの生起確率分布を正に設定する.そうすると,人間種族の棲むuniverseの他に幾つかuniverseが確率的に生成される.ここで,すべてのuniverseを要素としてもつ圜について『multiverse』と呼ぶ.この仮定にて,メタ物理空間とmultiverseを要素としてもつ圜『omniverse』は全体であり,[存在するすべてのもの|一切有]を含むとすれば,世界はomniverseで閉じる.これは{人間種族に思考可能である}最もnaïveな唯物論かもしれない.

 

 この唯物論上でveritasについて考えてみる.


 ある物理学者を想定する.前提として,彼はomniverseが閉じていることを知っている.そのうえで,彼は次のような知識をもっている.

  • メタ時空間の物質組成ならびにその性質
  • メタ時空間に機能するすべての法則
  • universeの正確な生起確率分布ならびに生起後の発展様式

 ここで,彼はveritasについて既知だろうか?

 答えを2通り挙げてみる.
否:事実が更新され,これらの知識が事実と整合しなくなる可能性がある.
是:不整合が訪れないかぎり,万象は彼の予測のままに進む.


 そもそもveritasとは何か? veritasとは世界についての絶対的な知識のことだ.そうならば,現在の状態についてのみ解剖しただけで,その成果をveritasと呼ぶようでは不徹底だ.したがって彼はmortalであってはならない.したがって彼はimmortalでなければならない.

 

 しかし,そもそもomniverseは閉じているのだろうか? universeが閉じていないという仮定の下でomniverseを提示したのだ.それなら,同じ理屈でomniverseが閉じていないという仮定を立てなければ,この仮説はnaïveでなくなってしまう.

 

 不可知だ.
 世界も,veritasも,全体も,法も,executorも,何もかも不可知だ.
 そう言い切ってしまうのが最もnaïveなのだ.
 けだしくもfinitude.